高砂の長屋

高砂の長屋

高砂の長屋 外観「小堀の住まい」

住宅メーカーやディベロッパーが提供する賃貸集合住宅というと収益ありきで、まずは一般受けしてメンテナンスが容易という事が優先される。当然ながら工業製品で被覆され、プランは可もなく不可もなくといったものが殆んどである。これらの事を追求すると、とどのつまり各社似たり寄ったりという事になり、あとは設備のグレードを競ったり、ややもすれば管理形態やその保証といった建物とはかけ離れたところで差別化を図るといった始末である。

約20年、住宅メーカーの設計として数多くの人たちと接してきた。そこから得た感覚的なものであるが常識的で画一化されたものには満足しておらず、賃貸という事もあり仕方なく住んでいるという人たちが、少数派ではあるがいて、その数は少しずつ増えているという手ごだえを感じている。中には湯水の如く排出される新しいものには、興味を示さず古い物件をあえて選んで自分たちなりの工夫を凝らしながら住まうといった人たちも増えてきた。

こういった現状の中、都市部を中心に建築家やデザイナーとコラボレーションした、独創的なものも増えつつある、いわゆる「デザイナーズマンション」と呼ばれるものだ。まだまだ数は少ないが、この出現により保守的な不動産業者の情報提供の手段にも変化が見られる。従来は最寄駅など地域をまず絞込み、その中から価格、間取りなどの希望に応じて選ぶというやり方がほとんどだった。そこに、デザイン性の高いものが現れた事により、雑誌の広告や自社のホームページ、専門のサイトといったメディアを活用した地域を限定するのではなく広い範囲で情報提供する形も現れた。売りである建物の情報も今まで以上に詳しく掲載されることとなり、ユーザー側も「カッコいい建物に住みたい」という事が念頭にあるので地域などは二の次で、範囲を広げて検討するようになる。今はまだ少数の市場であっても、供給側の絶対数もまだまだ少なく、更に先に述べた情報提供の変化も追い風と考えると、むしろ供給過多である多数を占める市場より、ビジネスチャンスが潜んでいるのである。

今回、計画した集合住宅のオーナーは、先行して計画を進めていた住宅の施主である。住宅計画地に隣接した北側に建つこともあって、あまりにかけ離れた、違和感のあるものになってほしくないということでの依頼だった。

当社は、創業以来「日本の美と心を現代に」という企業理念のもと日本人の生活文化や感性に馴染む様々な住まいを提供してきた。この理念は戸建住宅だけでなく賃貸集合住宅においても同様である。住まう人や訪れる人、より多くの人たちが、忘れかけていた伝統や文化をもう一度思い起し次世代に継承していく、そんなきっかけとなる集合住宅を創りたいと考えた。

この集合住宅はメゾネットタイプの7軒からなる長屋である。外観は、古くからある長屋をイメージさせた切妻屋根とファサードの凹凸が醸し出す陰影や木製の面格子が、どこか懐かしさを感じさせる。外壁には、メンテナンスや母屋との調和を考慮してダークグレーのガルスパンを使用した。

北側の道路に面しては駐車スペースがある。その間を通り玄関に向かうアプローチが各戸に設けられていて、それぞれの独立性を高めている。アプローチを進むと右手に坪庭がある、住まい手に好みの鉢植えを置いてもらい、浴室の窓からも緑が楽しめる。そこから、ポーチの陰影をくぐって玄関に入る、 1階はコンパクトにまとめられた水廻りと吹抜けのあるキッチン、外部デッキに面したリビング、ダイニングで構成されている。床材には1、2階共通で厚さ3cmの杉縁甲板を下地材なしで直貼りにしている。天井も2階の床材の裏面が、構造梁と共にあらわしになっていて木の質感を表現しつつローコスト化にも一役担っている。メンテナンスがやりにくいという点で敬遠されがちなフローリングだが、ここで使用したものは節だらけで死節には埋木がしてある材料である。従って傷が入ったとしても、かえって綺麗過ぎる工業製品のフローリングより施しようがある。リビングに面しては波板の塀で囲まれプライバシーも確保された専用庭がある。この庭は、外での食事も楽しめる木製のデッキと家庭菜園や子ども達が砂あそびもできる、土を残した小さなスペースに分かれている。2階は南北、2つのゾーンに分割されていて、北側のゾーンは寝室、南側のゾーンは多目的ルームとしていて、書斎やセカンドリビングとしての活用に加え、カーテンをする事でもう一つの寝室ともなり、ある程度の家族構成や、ライフスタイルに対応できる。2つのゾーンは建具で間仕切るのではなく(1、2階を通して建具があるのは洗面と収納だけで、ここでもローコスト化を図っている。)階段を含めた吹抜け空間により分割されている。又、天井は屋根形状に打ちあげられた勾配天井になっていて、その頂部下にはロフトを設けている。

道路から玄関に至る、ゆったりとしたアプローチ、自然をより身近に感じる事のできる坪庭や専用庭、空間に豊かさを与える吹抜けや勾配天井にロフト、時の移ろいを告げる庇や面格子の生み出す陰影、従来の画一化されたものにはないたくさんの演出が、小さな空間の中に盛り込まれている。

賃貸住宅はあくまで住まいの通過点かもしれない。それだけに本当の意味で心地よいと感じる住まいを今一度再認識してもらいたい。そして新たな出発点として、これからもかかわり続けるであろう、住まいに対する思いへの「軸」としてもらえれば、こんなうれしい事はない。

高砂の長屋 キッチン「小堀の住まい」

高砂の長屋 内観「小堀の住まい」

高砂の長屋 個室「小堀の住まい」

高砂の長屋 外観02「小堀の住まい」

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